缶詰雑学

オイルサーディン

 缶詰をめったに食べないおとうさんでも、オイルサーディンと聞けば目を輝かす。「フタを開けてさ、直火に乗せて、最後に醤油をちょっと、垂らすんだよね。もう、最高!」などとのたまう。これはオーセンティックなバーなどで出てくるメニューで、熱々になったところを頬張ると確かにウマい。
オイルサーディンとはすなわち、油漬けの小いわしのことだが、そんな単純なものが「どうしてこうも美味しいのか」と不思議に思えてくる。

 料理好きのおとうさんなら、森瑤子の小説に出てきたサーディン丼を憶えているはずである。フライパンにいわしをオイルごと入れて熱し、香ばしい匂いがしてきたらひっくり返して両面を焼く。醤油をさっと掛け廻してよく絡め、七味唐辛子を“惜しみなく振りかける”(原文のママ)。
これをご飯に乗せて刻みねぎをたっぷり乗せれば出来上がり。酒を呑んだあとなど、〆の飯には最高である。

 いわしは各国で獲れる大衆魚なので、昔から海沿いの国ではオイルサーディンが作られてきた。中でもフランス、スペイン、ポルトガルあたりは本場。いわしが新鮮なのはもちろん、使う油もオリーブ油、ひまわり油、大豆油、菜種油とさまざま。
中には発酵バターを使った高級品もあるが、日本だって負けていない。缶つまには何と、「ハバネロサーディン」というダークホースがいるのだ。砂糖醤油で味付けしたものに、激辛で知られるハバネロを利かせてあるのだが、これが清酒によく合う。辛さはピリ辛〜やや辛くらいで、けっして激辛ではないからご安心を。

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