缶詰雑学

アヒージョ

 缶界はアヒージョが大ブーム。アヒージョとはスペインのバル(居酒屋)でよく出てくる料理で、にんにくや唐辛子などで風味付けしたオリーブオイルで魚介、肉、野菜などを煮る料理...というのは食に敏感な方なら、すでにご存じだろう。そのアヒージョを、各メーカーが缶詰にして続々と発売しているのだ。

 油で煮るということは、材料がしっとり仕上がるということ。これは缶詰にはとても向いている調理法である。なぜなら、缶詰は最終的にフタを締めて密封したあと、殺菌のために高温で加熱するからだ。食べ物には、高温加熱すると、食感がもそもそしてしまうものもある。例えばマグロやカツオである。だからマグロやカツオを使ったツナ缶は油漬け(正確には油煮)にして、もそもそ食感を改善したものが多いのだ。

 油で煮る料理はほかにもある。フランスならコンフィという名前だし、イタリアやポルトガルにも、名前は知らぬが油でゆっくりと煮る料理は多い。日本にも油煠(ゆちょう)といって、120℃くらいに熱した油で調理する方法があるが、これはおそらくオイルサーディンを作るために考え出されたものだと思う。そんな中でもアヒージョが素晴らしいのは、にんにくの風味がふんだんに味わえること。フタを開けた瞬間、香ばしい匂いがどーんと広がり、たちまち胃袋が反応してきゅーと鳴き、つばも出てきて思わず「ごくっ...」となる。缶つまにもアヒージョがいくつかあるが、断トツに面白いのが「たいらぎ貝柱のアヒージョ・バジル風味」。あの、刺身でよく出てくるしゃくしゃくとしたたいらぎ貝柱が、アヒージョによってややねっとりするのが新鮮であります。

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