料理というのはひねくれたもので、綿密に作ったものより手抜きのほうが美味しいことがある。
先日もそんなことがあった。レシピ本のために様々なメニューを試していて、それなりに仕上がったので良しとした。やがて夜になり、使いかけの野菜〜大根、にんじん、油揚げを使って夕飯を作ろうと思った。みな形は不揃い、量もバラバラである。取りあえずすべて短冊切りに揃え、何となく長ねぎも足した。この時点では何を作るか考えておらず、作業だけ進めていった感じであります。
そのあと、何となく生姜をみじん切りにしていたら、頭の隅に“炒め物”という選択肢が浮かんだ。冷蔵庫に豚肉があったはずなので肉野菜炒めということになる。
メニューが決まればひと安心である。ひたすら肉野菜炒めに向けて進んでいったが、冷蔵庫を開けてみると豚肉がない。2秒くらい思案したのち、肉は缶詰を使うことにした。棚においてあった「缶つまホルモン・豚軟骨直火焼」が目についたのだ。甘辛い味つけだから、きっと良い味のタネになるだろう。
ごま油で生姜を炒め、野菜類と豚軟骨を投入して中火で炒めた。味見をして砂糖と醤油を足した。ともかく、行き当たりばったりの料理なのである。
結論を申せば、それがとても美味しかった。あんなにテキトーに作ったのに不思議なものである。それに比べると、レシピ本のために作ったメニューのほうが見劣りしてしまった。まったく困ったものである。