缶詰雑学

博士の缶詰

 世の中には著名人が監修した商品がある。川越シェフのキムチとか、大泉洋のスープカレーとか、そういうやつである。「僕もそういうのやりたい!」といろんなところで書いていたら、願いは届いた。缶つまで実現したのだ。「焼鳥おび肉塩だれ」と「ラムタン香草焼風」という2品であります。

 実際の開発では、メーカーにずいぶん骨を折ってもらった。僕が目指す味は塩分少なめ、だけどうまみがしっかりあるものだが、これが実は難しい。塩分を強めればパンチが利くから、誰が食べても美味しさを感じやすくなる。お店の料理の味が濃いのはそのためであります。それに対して、減塩するとインパクトも減ってボケた味になりがちだ。そこで、香辛料やハーブを組み合わせ、あるいは出汁を利かせて調整していくことになる。

 ラムタン香草焼風でいえば、試食を数度行い、毎回「もっと塩分を減らして」と要望を出した。その分、ローズマリーと黒コショウを増やしてもらい、いわゆるラム肉の香草焼きっぽくなるように仕上げてもらった。羊の香りがしっかり味わえるのは、僕がラム好きだから。焼き鳥おび肉塩だれも、同じように塩分を減らしてもらい、その分を香辛料で補うことで、ピリ辛で引き締まった味わいになった。ちなみに申せば、おび肉というのはももの付け根付近にある小さな筋肉。焼き鳥屋でもお目に掛かれない希少な部位なんですぞ。

 ラムタン香草焼風は家でもよく食べている。季節の野菜(今ならアスパラ)と合わせ、缶汁ごとオーブンで焼くだけで実にウマい。これぞホントの缶修であります。

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