缶詰雑学
マジンガーならぬ缶切の“ゼット”
普段、何気使っている缶切のお話。缶のフチにちょいと引っかけて、テコの原理で刃をグサリ。一旦引き上げて位置をずらし、再びグサリ。そうやってグサリグサリを、まあ10数回もやれば、大抵の缶詰は開けることが出来る。あのグサリ順送り方式の缶切が、実は日本の発明品だって知ってましたか?
かつての缶切はとてもややこしい形をしていた。一見すると先の曲がった錐のようで、その途中に刃が垂直に突き出ている。一体どうやって使うのかまず判らない。実際、扱うのも難しかったようで、昭和34 年に朝日新聞に掲載された「サザエさん」では、その缶切を使ったサザエさんがケガをしてしまう場面が出てくる。
それが昭和20年代後半になって、新潟の三条市にいた高野善吉という金物製造業者が「テコの原理で刃を当てればいい」と思いついた。そうして生まれたのが「ゼット缶切」であります(画像参照)。安全で使いやすく、しかも切れ味もいいこの缶切はヨーロッパにも輸出され、瞬く間に世界に広がった。
三条市と燕市を合わせた「燕三条」と言えば、刃物や金物の加工技術で世界トップレベルだ。初代iPhoneだって、裏面のステンレスを鏡のように磨き上げたのが同地の町工場なのだ。いやはや、日本の産業ってやっぱりすごいんですなァ。
ちなみにゼット(Z)の意味は善吉さんの頭文字と、アルファベットの最後、つまり“究極の”といった意味合いで付けられたという。マジンガーZもびっくりのトリビアでございます。