缶詰雑学
鮭中骨缶の話
そいつは、スーパーの缶詰売り場にひっそりと置かれている。見た目も地味で、ツナ缶や鮭缶にまぎれてまったく目立たない。それでいて一定数のファンがおり、常に補充されている...。それが鮭中骨缶であります。
鮭の中骨、すなわち背骨だけを詰めた缶詰。味付けは塩味のみ。そんな珍妙な缶詰は日本にしかない。
おそらくは、鮭を捌いて身を切り出し、あとに残った骨を「捨てるのも何だかもったいないから缶詰にしてみっか!」と、そんな発想から生まれたんだろうなァと推測しているあなた。正解です。鮭中骨缶はそういう思いから生まれたのです。
開発したのは岩手県宮古水産高校の先生と生徒。実習で鮭缶などを作るときに残った骨を活用しようと、1986年に缶詰化したのだ。もちろん世界初の試みであります。
魚の中骨はウマい。噛んでいると髄からうまみを含んだ脂がにじみ出てくる。家で調理するには固すぎるが、缶詰なら高温加熱しているから、ほろほろっと柔らかく煮えている。カルシウムがたっぷり摂れるのも嬉しい。
水産高校で実験的に作られたものが、今では缶詰メーカー数社が手掛けるほどの人気商品になったわけだ。値段は100円台のものが多いが、中には300円を超える高級品もある。そういうのは中骨といいつつ身肉がたっぷり付いており、中骨缶というより「骨付き中落ち缶」である。スライスした玉ねぎと合わせ、ぽん酢醤油をかけるとたまらん美味しさでありますよ。